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最近恋愛ネタが増えてきた
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黒海の入口にある街、オスマントルコの本拠地、イスタンブール。
それが俺の街だ。
これでも昔は世間を騒がせた盗賊だったが、
今は(多少)改心して、冒険者ギルドのメシを食っている。
退屈この上ない生活。変化のない街。飽き飽きする日常。


どうも最近、馴染みの顔が見えなくなっている。
アイツはどうしたんだ、と、休憩所でヒマそうに水タバコを吸っている
マスターに聞いてみた。
「アイツなら旅に出たよ」
旅だと?
「先日、ヘンな訛りのある冒険者に雇われて行っちまったよ」
でっかい船に乗っててな、と長話モードに入ったマスターを無視して
隣にいたマスターの娘(幸運にもマスターにこれっぽっちも似ていない)
ラディアに水タバコを注文する。
タバコを俺の前に置きながら、ラディアはそっと耳打ちしてきた。
「ヨーロッパの冒険者さんに雇われていかれたそうですよ」
何故西側の連中がこの街にいるんだ。
「さぁ、詳しくはわかりませんが…最近、この国の人ではなさそうなお客さんが
 ウチにもたくさんお越しになってるんですよ」
ふと周りを見渡すと、なるほど、明らかに白い肌の、西側の人間がいる。
服装だけはこの国のもののようだが…。
あんな少々の変装と、訛り全開のトルコ語を喋る連中の正体も
見破れないとは、出航所役人の職務怠慢だな。

まぁ西の連中が何をしていようと、ウチの連中がどこに行こうと、
俺の知ったことじゃない。

ベンチ一つを占拠して、ゆっくりタバコを楽しんでいると、
赤い髪の小柄な女が隣に座ってきた。
「兄さン、ウチの子にならないか?」
だしぬけにアホなことを言ってきた。
俺は女を見た。
茶色のどんぐりまなこをじっとこちらに向けている。
やはりオスマンの人間じゃない。肌は黒いがヒスパニック系の顔。
ひどい訛りのトルコ語。コイツは西側の船乗りだ。
「マスターにアンタのこと聞いタ。腕のいい盗賊、探シてる」
マスターを睨んだ。そっぽを向いている。余計なことを言いやがって。

もう一度女を見た。
潮風にさらされて焼けた髪。ホコリまみれのペルシャ服。
紐の切れかけたサンダル。
世界中を駆け回っている冒険者であることを物語っている。
退屈はしないかもしれない。

いいだろう。退屈させるなよ。
「ボクについてくれば退屈はしないヨ。アンタ、名前は?」
ラシードだ。
「よろしくネ、ラッシー君」


…ラッシー?
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